FC2ブログ
admin admin Title List
IMG_8101.jpg
 EOS40D+EF-S55-250mmF4-5.6IS

 朝、家を出るときに何もなかった玄関には、鳥かごが置いてあった。
 中学校1年生だった僕は、学校から家に帰るとビックリしたのだった。鳥かごの中をのぞくと、まだちゃんと毛並みの整っていない、小さな小さなスズメの雛が入っていた。母に聞くと、「家のすぐ目の前に落ちていたから拾ってきた」と言った。
 僕たち家族はその日から、スズメの雛が飛べるようになるまで世話をしようと決めた。

 ある日学校から帰ると、母が玄関でスズメに餌をあげていた。餌は炊いた米だった。炊く前の米は口にしなかったらしい。母は『ぴーちゃん』と呼びながら、指の腹に米をのせて何度もスズメの口に運んでいた。いつの間にか名前は『ぴーちゃん』になっていた。
 あまりにもありきたりの名前だったので、せっかくつけた『ぴーちゃん』は残して違う名前をつけようとした。その当時僕はプロレスが大好きだったので『ジャイアントぴーちゃん』『アントニオぴーちゃん』『グレート・ザ・ぴーちゃん』『ぴーちゃんマスク』『ジャンボぴーちゃん』と提案した。
 すべて却下された。

 みんなで可愛がっていたぴーちゃんは、すぐに飛べるようになった。
 朝鳥かごからでると、家から離れ自由に外を飛び回り、地面に降りては散歩し、夕方になると帰ってくる。まるで猫のようなやつだった。そんな日が何日も続いていた。
 
「ぴーちゃんが帰ってこないの」
 ある日突然母は心配そうに言ってきた。外はもうすでに日が暮れていた。いつもなら帰ってるはずの時間だった。
「きっと帰ってくるよ」僕は言ったが、その後何ヶ月待っても帰ってくることはなかった。

「ぴーちゃん、きっと自然に帰れたんじゃない? うちに居るよりも良かったかもね、その方が自由だし」
 妹が言った。母はうなずいた。弟は何だかよくわからなそうにしていた。僕たち人間が育ててしまった分、自然で生きていく能力が欠けてしまってそうで不安だったけど、僕も妹と同じ思いでいることにした。その方が気持ちが軽くなる気がした。それに、飛べるようになるまで世話をすると、最初に決めていたのだし。

『スズメのぴーちゃん、さようなら』
 鳥かごを見ながら、ぴーちゃんにさよならをした。


 
 ブログランキングに参加しています。楽しめたらポチッっとクリックお願いします。
 にほんブログ村 写真ブログ 日常写真へ
スポンサーサイト



テーマ:写真日記 - ジャンル:写真



| HOME |


Design by mi104c.
Copyright © 2008 でんでけ日記, All rights reserved.